逸宗一のSFクラブ

SF好きが高じてブログ解説してしまいました。SF映画や小説の考察、また、洋楽も好きなので、そっち方面の書き込みもしたいです。

映画考察第一回『エイリアン』 テクノロジーとの対立とその恐怖

こんばんは。鬱SF『ぼくらの』を読了し、絶賛落ち込み期の管理人、逸宗一です。

さて、前回もお話したとおり、このブログでは不定期でSF映画や小説の感想・考察、あとたまに洋楽について主に語っていきたいと思っています。(ド王道映画が好きなだけあって、言いたいことも多分なんの面白みもないド王道なんですけどね)


さて記念すべき第一弾はこちら!


『エイリアン』1979年 リドリー・スコット監督


あっ、待って、帰らないで! 確かにド王道だけど! 

皆さんご存知、『遊星からの物体X』と並ぶSFホラーの金字塔。当時無名だったシガニー・ウィーバー出世作としても知られており、さらには『ターミネーター』に繋がる『戦う女性』というヒーロー像を印象づけたケッサクであります。

○あらすじ (以下、ネタバレ含みます)

2122年。宇宙貨物船ノストロモ号は地球に向かっての数年単位の航行中、とある辺域で謎の信号を拾う。ノストロモのメインコンピューター『マザー』は冷凍睡眠中だった乗組員七人を叩き起こし、その調査のために航行ルートを変更した。不満を漏らす乗組員たちだったが、科学責任者のアッシュが、「知的生命体と思しき存在の調査を怠ると規約違反となる」と発言し、一行は渋々探索に向かうことに。やがて、ノストロモは電磁波の嵐渦巻く惑星に到着。船長であるダラス、副長のケイン、航海士のランバートが調査に赴くが、そこで見たのは謎の宇宙船と、まるで操縦席のようなものに腰掛けた奇怪な巨大生物のミイラ、そして無数に並ぶ「卵」だった……!



はい、もうあらすじからして「行っちゃヤベェところ」に迷い込んだ感がプンプンです。そしてその予想は的中、卵から飛び出した蜘蛛のような生物がケインの顔に張り付き、エイリアンの幼体を寄生! ケインの胸を食い破って現れたエイリアンと、逃げ場のない乗組員のサバイバルか幕を開ける! 簡単に言えばこんな感じです。マジで。

作中、エイリアンは、文字通りの「最強生物」として描かれています。高い知能、恐るべき身体能力、そして強酸性の血液に真空空間でも生存可能、と真面目に「こいつは神様が最初っから兵器目的で作り出したのではないか」と思わせるほどのバケモンです。劇中でも、実はノストロモを雇っていた日系企業がエイリアンの存在に気づいており、その研究のために彼らを宇宙に寄越したことが語られています。
しかも、何が恐ろしいって、企業はそのエイリアン確保の極秘任務のためにアンドロイドを送り込んでいました。科学担当のアッシュ、彼がそのアンドロイドだったのです。アッシュは企業の本当の目的が露呈した途端、凶暴化し、他の乗組員に襲いかかります。身体を破壊されながら、意味不明なことを口走りながら遅いくるアッシュに、エイリアン以上の恐怖を覚えた方は多いのではないでしょうか。

そんな、エイリアンとアンドロイド、そして乗組員の命ですら軽視する巨大企業という三体の「化物」に立ち向かう主人公、リプリーの活躍が堪能できる名作です。



さて、今回のこの記事、本来であれば怪物としての『エイリアン』についての考察を書くべきなのでしょうが、今回僕が注目したのは、その世界観です。

宇宙船、ノストロモ号の内部装置や構成は、今で言う『レトロフューチャー』な組み合わせとなっています。
常に薄暗い船内にブラウン管で組まれた分厚くて奥行きのあるコンピュータ、キーボードタイプのコンソール、肉眼での確認が必須なガラス製のコクピットのキャノピー、パイプや動力ケーブルが走り回る見た目よりも機能優先のコクピットやその周辺機器……。

間違っても、ホログラムやタッチスクリーン、そんな小洒落た者は一切登場しない無骨で油臭い世界です。2019年の現在でさえ、タッチ式のデバイスや薄型ビジョンが普及しているというのに、劇中描かれる100年以上の未来は、未だに70、80年代の技術にしがみついています。

しかし、そんな機能は、一種素朴な暖かさと優しさ、そして力強さを内面に秘めていると僕たち視聴者に思わせてくれます。人の温もりを感じない、真っ白で清潔な世界よりも、多少は薄汚れてもいいから、人の喜怒哀楽が反映された世界に住みたい、と願ったことは、SF好きなら誰しもが一度はあるはずです。極端な例ではありますけども、『宇宙の戦士』の世界よりは、『千葉シティ』の方がイイ! みたいな感じで(笑)

しかし、そんな一種温かい世界を踏みにじる異物が、ノストロモの内部に現れます。

それは、ズバリ、エイリアンではなく、アンドロイドのアッシュです。

――なぜ、アッシュがエイリアンよりも『異物』なのか?

それは、アッシュが唯一の『未来を感じ取れる存在』だからです。

先程も述べたように、ノストロモ号内部は1970、80年代のテクノロジーで形作られた世界です。――それはもちろん監督や美術のスタッフの意図したことではなく、撮影当時が70年代であったために、その時点で考えうる限りの最新鋭の未来像を描いた結果であるので、科学が発展した『現代』からみてのレトロフューチャーではあるのですけども、――しかし、言い換えてみればそれは『現代』と直結した、まだ見通せる範囲の世界であるわけです。でも『現代』でも未だに研究途中であるアンドロイドという存在は、映画内でもずば抜けて未来感を演出しています。

劇中、圧倒的な未来そのものでもあるアンドロイドのアッシュは、平然とした顔で70年代の世界に踏み込んできます。

アッシュは美しいです。機能だけを追い求めたせいでがっしりとした見た目となったコンピュータやエンジンに比べれば、人を模した彼はその何倍も、何倍も美しい存在として描かれています。アッシュの冷酷さ、合理性、残虐さ、そしてその未来ゆえの暖かさの欠如と美しさは、優しげで不格好な技術に包まれていた乗組員にとっては異物以外の何者でもないでしょう。

そう、アッシュは『現代』にも通ずる遠未来の普遍的なガジェット描写を手に入れたことで、『エイリアン』というSFの世界でもその異常性が濃厚に浮かび上がるのです。

しかも、それに呼応するかのように、今まで味方だと思っていた身の回りのテクノロジーが、乗組員たちを裏切ります。

異星人を調べるという本来の目的を知っておきながら、知らんぷりを決め込んでいた『マザー』、自分たちの雇用主であった企業。

エイリアンは、『身近にあるものを敵にまわした際の恐怖』を色濃く描いています。それは『エイリアン』の中ではすなわち、『テクノロジーとの対決』です。敵に回ってしまった馴染みのある存在など、所詮異物でしかないのです。

同じテーマはターミネーターマトリックスでも描かれてきたことではありますけども、すでに登場人物にとって身近で、馴染みのある機械たちとの戦争、というのはその2つにはありませんでした。

監督のリドリー・スコットは、後年、同じくテクノロジーとの対決を描いた『ブレードランナー』を撮影しています。

ブレードランナー』で描かれていたのは、テクノロジー(=レプリカント)への不信感です。最先端技術のレプリやコロニーなどは宇宙の彼方に追いやって、それらを嫌う者たちは、最悪な環境であっても愛着のある地球に留まる、その結果は、もちろん言うまでもなくレプリカントと人類の対立、そして闘争として描かれています。

『エイリアン』で描かれた、機械への不信感。そのことを僕は感じずにはいられませんでした。



さて、以上で第一回の記事を終わりたいと思います。何か調子に乗ってめちゃくちゃ書きましたが、読み返してみたら絶望的にわかりにくいですね。同じこと何回も言ってるし。


拙い文ではありますが、これからもSFについての愛や考察を語っていきたいと思います。よろしければ、これからもお付き合いいただけると幸いです。

それでは、また。

はじめまして

初めまして。SF好きの大学生、逸宗一(いつそういち)と申します。元ネタはGuns N' Rosesの曲『It's so easy』から。

元々はツイッターSF映画や小説の感想や考察をほそぼそと書いていたのですが、いかんせん制限文字数が140ぽっちしかないからやりにくい! そこでブログを解説したというわけです(短絡的)

ま、ブログ開設に至った経緯はこれくらいにして、以下自己紹介

名前・ 逸 宗一

趣味・ 読書、映画鑑賞、音楽鑑賞(特に洋楽)、水族館

好きな作家・ 伊藤計劃筒井康隆夢枕獏京極夏彦、S・キング他

好きなバンド・ B'z、Goo Goo DollsKing CrimsonPink Floyd、Simon &Garfunkel他

好きな映画・ 第9地区、ブレードランナー、エイリアン、時計じかけのオレンジ


…っとまあこんな感じでしょうか。いやぁ、改めて見てみると好きなものとかド王道ですね(汗。何とも熱中しきれてないというか、中途半端というか……しかもSF映画に至ってはもはや必修科目の『E.T.』も『未知との遭遇』も、『2001年宇宙の旅』も見てないという徹底的なダラクっぷり。洋楽もほとんどジョジョに出てきたやつしか知らんし…


そんなぼくが綴っていく『逸宗一のSFクラブ』(センス皆無)がこれからどーなっていくのか、それはお恥ずかしながら、本人であるぼくにもわかりません…出来たらSFや洋楽についてダラダラと書けていけたらと思うのですが…

まぁ、最初はこんなもんでいいのかな? ブログ自体初めてなのでどーすればいーのかそれすらも危うい状態で(そんなんでやってけるのだろうか?)スタートしましたSFクラブ、もし少しでも興味を持っていただけるのなら幸いです。どうぞよろしくお願いします